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FT外来: 卵管鏡下卵管形成術

はじめに

卵管鏡下卵管形成術(Falloposcopic Tuboplasty: FT)

卵管鏡手術のメリット

腫瘍外来(子宮鏡検査・卵管鏡下卵管形成術:FT)診療日

はじめに

不妊症の原因(卵管因子)

卵管は卵巣から排卵する卵子を卵管采で回収し、蠕動運動にて子宮側へ運搬する一方、卵管膨大部で受精、そして約1週間にわたる胚成長のための生殖環境を提供するといった重要な役割を担っています。

卵管が閉鎖(卵管閉鎖)したり癒着(卵管癒着)を起こしたりすると、卵子や精子、受精卵が卵管を通過できない状態となり、不妊の原因となります。一般的に、女性不妊に占める卵管因子(卵管が閉塞していることが原因の不妊症)の割合は約30%前後と、高率であると報告されています。

卵管鏡下卵管形成術(Falloposcopic Tuboplasty: FT)とは

卵管閉塞(卵管因子が原因)と診断された場合には閉塞や癒着を解除する手術、または体外受精が選択されます。手術法としては、子宮内膜症や卵管炎などによる癒着が原因である遠位卵管閉塞(卵巣に近い部位での閉塞)に対しては、腹腔鏡手術による癒着剥離や卵管采形成術が、近位卵管閉塞(子宮に近い部位での閉塞)に対しては、卵管鏡下卵管形成術(Falloposcopic Tuboplasty: FT)が行われます。FT外来で治療計画を立てた後、静岡厚生病院にて俵院長が出張手術を行います。日程調整が難しい場合は、静岡厚生病院の医師が担当します。

卵管鏡下卵管形成術の適応

  1. 近位卵管(卵管間質部から峡部)に、閉塞や狭窄を認める方
  2. 比較的若年の方(38歳以下)
  3. タイミング療法や人工授精による妊娠が期待される

*卵管膨大部に閉塞や狭窄を認める場合、体外受精や腹腔鏡手術が望ましいです

*39歳以上の方は、FTによる妊娠率が高くないため、適応とならない場合があります

治療効果

  1. 卵管開通率は90%以上
  2. FT後の妊娠率は30%程度

*年齢や卵管閉塞の原因により、効果が異なります

*閉塞解除が困難な場合、再閉塞が起こることもあります

*術後6ヶ月を経ても妊娠成立に至らない場合、体外受精へのステップアップが必要です

卵管鏡手術のメリット

卵管鏡手術のメリット

卵管鏡下卵管形成術(FT)は、特殊なバルーンカテーテルシステムを用いた低侵襲手術です。太さが0.6mmという非常に細い卵管鏡(ファイバースコープ)を用いて、卵管内の狭窄、閉塞した部位を拡張する手術です。特殊な機械と技術を要する手術のため、実施可能な施設が限られますが、一方で低侵襲であり、術後の痛みや出血がほとんどないこと、健康保険や高額療養費制度の適応になることから、現在注目されている手術です。

卵管閉塞と診断をされた場合、体外受精が選択される傾向にありますが、FTによる卵管開通率は90%以上、妊娠率は約30%と報告されており、自然妊娠を希望される多くの患者さんが適応となります。

実際の手技

卵管鏡手術の実際

@子宮鏡ファイバーにて、子宮内腔面や卵管口を確認します。

A子宮内にFTカテーテルを挿入します。

B卵管口からバルーンカテーテルを挿入します。このときバルーンの中心には卵管鏡があり、卵管内腔を確認しながら、バルーンに圧をかけながら、閉塞部位の拡張を行います。

C開通した後は、バルーンを引き戻しながら卵管内腔面を観察していきます。 手術時間は30分〜1時間程度です。

*当院では子宮鏡を併用した新しい手技にてFTを行っております。この手技を行うことにより、子宮内腔の観察も可能となるほか、確実に卵管内にバルーンを進めることができます。

*子宮筋腫や子宮内膜症を合併する場合には、腹腔鏡手術に併用する場合もあります。

*局所麻酔や静脈麻酔では、十分な鎮痛が得られない場合もあり、全身麻酔下で行うこともあります。

卵管鏡手術の手技

卵管鏡下卵管形成術の限界

FT は体外受精の代替治療となりうる治療方法であると考えられています。ただしその効果は永続的ではなく、手術後6〜8カ月を過ぎると妊娠率が低下します。FT 実施より6カ月程度はタイミング療法や人工授精を試みますが、それでも妊娠に至らない場合は再度FTを行うか、体外受精へのステップアップをおすすめします。

卵管鏡下卵管形成術の費用

  1. 保険適応のため自己負担は3割となります。
  2. 高額医療費の対象となります。事前に限度額適応認定書を申請の上、提示いただければ限度額までのご負担となります(限度額は所得により異なります)。
  3. FTにて卵管疎通性が改善されない場合でも費用は発生します。
  4. 民間の任意保険の支払い対象となります。詳細はご契約されている保険会社にご確認ください。
  5. 詳細につきましてはスタッフまでお気軽にお尋ねください 。

腫瘍外来(子宮鏡検査・卵管鏡下卵管形成術:FT)診療日

担当医師 俵史子院長・中山毅医師
診療日 随時
予約方法インターネットでのご予約が可能です。

※日時に変更がある場合があります。ご予約の際にご確認をお願いします。

腫瘍・子宮鏡検査に関するよくある質問

子宮内膜症は不妊症の原因になりますか?
子宮内膜症は、生殖年齢女性の7-10%に認める疾患です。主な症状は月経困難、慢性骨盤痛、排便痛、性交痛などの疼痛と妊孕性低下です。子宮内膜症患者の約50%に不妊を合併するという報告があり、不妊症の原因になります。特に子宮付属器癒着から、卵管のピックアップ障害や通過障害の原因となりえるほか、排卵障害や黄体機能不全を引き起こすこともあります。進行した子宮内膜症を合併する場合、一般不妊治療では妊娠成立に至らないことがあり、ART(生殖補助医療)を見据えた対応が必要です。
子宮内膜症は妊娠前に手術が必要なのでしょうか?
年齢、嚢胞の大きさ、挙児希望の有無を考慮して経過観察・薬物療法・手術療法のいずれかを選択します。破裂、感染予防、病理学的診断の観点から手術療法が優先されることもありますが、一方で子宮内膜症患者では卵巣予備能が低下していることが多く、安易な手術は望ましくないとされます。骨盤痛の対応が困難な時、6-8cm以上の卵巣チョコレート嚢胞を認める場合、精査にて悪性を示唆する所見がある場合でなければ、不妊治療のために手術をする必要性は低いと考えられます。
子宮鏡検査は痛みはありますか?
子宮鏡は細く柔らかいため痛みを感じることは少なく、通常麻酔は不要です。生理食塩水を子宮内に注入する際に、若干の痛みを感じることがあります。
生理痛が重く、性交痛もあるためタイミングが取りづらい状態です。何か方法はありますか?
性交痛を認める場合、重度の子宮内膜症や子宮腺筋症を合併することが多く、人工授精などの一般不妊治療を行うことはできますが、一般的に治療成績は良くない事が多いとされます。子宮内膜症や腺筋症の状態を考慮しながら、ARTが選択されることが多いです。また重症例では、不妊治療の前に薬物療法を行うこともあります。
子宮鏡検査は検査にどのくらいの時間がかかりますか?
検査に要する時間は5〜10分程度です。
子宮腺筋症は流産の原因になりますか?
子宮腺筋症は病態が多様であるため、腺筋症を合併した患者さんが流産しやすいかの判断は難しいと考えられます。腺筋症を合併した患者の流産率をARTにおいて検討した結果、腺筋症を合併しない対照群と比較して約30〜35%と高かったという報告があり、腺筋症は妊娠に影響する可能性があります。また妊娠後も、早産・前期破水・産褥弛緩出血の原因となりうることもあり、妊娠中の慎重な管理も必要です。

Tawara IVF Clinic:静岡県静岡市の不妊治療に特化した婦人科 俵IVFクリニック

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