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コラム:不妊治療の最新情報

コラム:不妊治療の最新情報について

●コラム:全粒穀物(whole grain)の摂取量と妊娠の関係について

●コラム:月経周期が長い女性はビタミンD欠乏と関係ある?

●コラム:妊娠初期の常習的カフェイン摂取とビタミン不足の影響

コラム:不妊治療の最新情報について

コラムページでは、当院の医師や研究員が婦人科、特に不妊症や不育症治療、その後の妊娠から出産についての最新情報を掲載しています。

妊娠初期の常習的カフェイン摂取とビタミン不足の影響

妊娠初期のカフェインの常習的な摂取やビタミン不足が流産に関係している可能性を示した研究結果がアメリカ生殖医学会誌で発表されました。

Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment (LIFE) studyとしてアメリカのミシガン州とテキサス州で実施されたこの調査は妊娠を希望する501人のカップルを対象に実施され、参加者にはアルコールやカフェインなどの嗜好品の摂取状況およびビタミン剤などのサプリメントの使用の有無を毎日記録してもらっています。

参加した501カップルのうち自然妊娠したのは347名(単胎妊娠: 344名、双胎妊娠:3名)。単胎妊娠者の中で98名(28%)が流産でした。

論文の著者らは妊活中および妊娠初期の嗜好品やサプリメントなどの摂取状況と流産となった症例の間に何か関連性がないかを調査しています。
その結果、以下の2点がわかりました。

1)流産となった女性は妊娠初期に1日2杯以上のカフェイン飲料を接種している割合が多いこと。
2)流産となった女性は妊娠初期にビタミン剤を服用しているケースがすくないこと。

もちろんカフェインの取りすぎやビタミン接種の不足が必ず流産につながるということではありませんが、この論文では流産を引き起こす原因になる可能性があることを指摘しています。

しかしながら、なぜカフェインの常習的摂取やビタミン不足が流産の原因になるのかはわかっていませんので、今後の研究が期待されます。

妊娠初期における葉酸(ビタミンB9)の摂取が生まれてくる子供の二分脊椎のリスクを減少させることはよく知られていることですが、今回の調査はビタミン剤の妊娠初期における新たな役割について理解を深めるうえで大変有益であると思います。

●引用元
Fertil Steril. 2016 Jul;106(1):180-188. Lifestyle and pregnancy loss in a contemporary cohort of women recruited before conception: The LIFE Study. Buck Louis GM, Sapra KJ, Schisterman EF, Lynch CD, Maisog JM, Grantz KL, Sundaram R.

月経周期が長い女性はビタミンD欠乏と関係ある?

ビタミンDの供給源は1)太陽光を浴びることで皮膚で合成される、2)食物からの摂取になります(魚に多く含まれます)。 卵巣、胎盤、子宮の正常な機能維持にはビタミンDが必要であることが知られています。ですから、ビタミンDの欠乏は妊娠することにも影響する可能性が予想できます。 実際に動物実験ではビタミンD欠乏状態にしたマウスは妊娠率が低下することを確かめた報告があります。

これまでにヒトではビタミンDの欠乏女性では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の発症率が高いこと、そしてPCOSの女性はビタミンD摂取により卵胞形成と排卵が改善するケースがあることが報告されています。これらのことからビタミンD欠乏とPCOSの間にはどうも関連性がありそうだということになっています。

今回紹介する論文はこのビタミンD欠乏がPCOSのような疾患をもっていない女性の月経周期にも影響を与える可能性を報告しています。この調査には無月経のような重症な排卵障害をもつ女性を除いた23歳から34歳の1,102名の女性が参加しています。

参加女性の月経周期は27日未満の短い周期をもつ女性は373名(34%)、35日以上の長い周期をもつ女性は55名(5%)、月経周期が不規則な女性は51名(5%)、正常は623名(57%)でした。 (日本産科婦人科学会では月経周期は25日-38日が正常で24日より短い場合は頻発月経、39日より長い場合は希発月経という定義があります)。

月経周期:1)正常(27-34日)、2)27日未満、3)35日以上、4)不規則の4群に分類し、25-ヒドロキシビタミンDの血液検査により体内のビタミンDの存在量を評価しました。

その結果、月経周期が35日以上と長い女性は体内のビタミンDの量が月経周期正常群に比べて低いことが明らかになりました。月経周期が短い女性や不規則の女性ではこのような傾向はみられませんでした。

今回の調査ではPCOSをもつ女性は含まれていないため、健康な女性であってもビタミンDが欠乏すると月経周期が長くなる傾向がある可能性を指摘しています。では、ビタミンDを十分量補えば、月経周期が長めの人はその症状が改善するのか?その検討は今後の課題となっています。また、続報を期待したいです。

●引用元
Fertil Steril. 2016 Jul;106(1):172-179.
Increasing serum 25-hydroxyvitamin D is associated with reduced odds of long menstrual cycles in a cross-sectional study of African American women.
Jukic AMZ, Upson K, Harmon QE, Baird DD.

全粒穀物(whole grain)の摂取量と妊娠の関係

マサチューセッツ総合病院で行われているEnvironment and Reproductive Health (EARTH) studyという食事や生活習慣が妊娠に与える影響について調査された内容の研究になります。今回の報告では全粒穀物(whole grain)の摂取量と妊娠の関係について調査をしています。

全粒穀物は精製していない穀物全般を指し、具体的には玄米などです。最近は、健康志向の人向けにシリアルやパンに含まれている商品もよく目にするようになりました。全粒穀物は精製したものに比べ、食物繊維や各種ビタミンが豊富であることから、高い栄養価をもっています。米7麦3の混合率の麦飯をお茶碗1杯(100g)食べると、約30 gの全粒穀物摂取になります。

今回の調査では2007-2014年の間に新鮮胚移植を実施した18-46歳の女性264名を対象にIVF実施前にFood Frequency Questionnaire(食事摂取頻度調査票)を用いた食事の調査をし、1日の全粒穀物摂取量から、@21.4 g/日未満、@21.5-34.2 g/日、B34.3-52.4 g/日、C52.5 g/日以上の4群に分類し、臨床成績(着床率、臨床妊娠率、出生率)を比較しています。

その結果、以下に示すように全粒穀物の摂取量が多い女性ほど良好な臨床成績を示しました。特に@の21.4 g/日未満群とCの52.5g/日以上群の比較では着床率と出生率に統計学上の有意な差を認めています。

着床率は@51%、A53%、B57%、C70%
妊娠率は@46%、A49%、B51%、C61%
出生率は@35%、A36%、B40%、C53%

また、研究グループは全粒穀物の摂取量と子宮内膜厚に相関性を認め、患者背景を考慮した解析の結果、全粒穀物をまったく摂取していない女性に比べ、1日に1オンス(28g)の全粒穀物を食べている女性は子宮内膜が0.4 mm厚く、さらに1日に2オンス(56 g)食べている女性は0.8 mm、1日に3オンス(84 g)食べている女性は1.2 mmも子宮内膜厚が異なるという結論を導いています。本文中では全粒穀物には植物エストロゲンが豊富に含まれているため、それがエストロゲン受容体を刺激することで、子宮内膜が厚くなる可能性などについて考察しています。

このように食生活が妊娠結果に与える影響は決して小さくありません。食生活を見直すきっかけにしていただければと思います。

●引用元
参考文献 Fertil Steril. 2016 Jun;105(6):1503-1510.
Maternal whole grain intake and outcomes of in vitro fertilization.
Gaskins AJ, Chiu YH, Williams PL, Keller MG, Toth TL, Hauser R, Chavarro JE; EARTH Study Team.

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